
娘がまだ、1歳半から2歳くらいの頃だったでしょうか。 忘れられない夕暮れの一コマがあります。
当時の僕は夜勤のある生活で、 出勤前のわずかな時間が、 娘と過ごす大切なひとときでした。
仕事着に着替え、 気合を入れ直している僕をめがけて、 小さな「怪獣」が突進してきます。
出勤前の格闘。小さな怪獣の「容赦ない攻撃」
娘のテンションは、すでに最高潮。
僕を床に押し倒して馬乗りになると、 手加減なんて言葉を知らない小さな指先が、 僕の「目」をめがけて伸びてきます。
「危ない、危ないって!(笑)」
僕もまだ、この時は 「そんなに痛くないだろう」と 笑いながら娘をあやしていました。
ところが、目を守ろうと顔をそむけた瞬間。
代わりにつかまったほっぺたを、 加減を知らないフルパワーで 「ギュッ」と握り潰されました。
「……っ!痛いっ!」
想像を絶する痛みに、思わず声が出ます。 本気で涙が出るほど痛い。
でも、僕が困れば困るほど、 娘は「キャハハ!」と笑って手を休めません。
ついには楽しさが限界突破したのでしょう。 口元からよだれがこぼれ、 僕が「うわっ!」と顔を背けると、 それが彼女のツボに大ヒット。
次の瞬間。
娘は満面の笑みで、僕の顔面に 「よだれ」をポタリと落としてきたのです。
……パパ、完全敗北。
余裕がなかったあの日の僕と、今の僕
これから現場へ向かおうという矢先の出来事。
予想外の激痛と、汚れと、時間への焦り。 さっきまで笑っていたはずの僕は、 つい「大人げなく」本気で怒鳴ってしまいました。
さっきまで天使のようだった娘の顔が、 一瞬で「この世の終わり」みたいに歪み、 そこからは大洪水のような号泣です。
出勤時間は迫る。 泣きじゃくる娘を必死になだめる。
さっきまであんなに笑い合っていたのに……。 半分パニックになりながら、 後ろ髪を引かれる思いで家を飛び出したあの日を、 今でも鮮明に覚えています。
あれから随分と月日が流れましたが、 今でも仕事に向かう道中で、 ふとその光規を思い出します。
あの大泣きした顔も、 馬乗りになった時の小さな重みも。
今となっては愛おしい、 「成長の記録」でしかありません。
今の僕なら、あの日の自分に 笑ってこう言える気がします。
「そんなにカリカリするなよ。 幸せな時間じゃないか」
家族のために働く。 その原点は、案外こんなドタバタな日常に あるのかもしれません。
笑顔を守るために、今日も現場へ向かう
娘は泣くのが仕事。
僕は、それをあやすのが仕事。
そんなことを思い出しながら、 僕は今日も現場へ向かります。
あの日の娘に負けないくらい、 僕も僕の仕事をきっちりこなしてくるつもりです。
それじゃ、行ってきます。



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