止まっていた時計が、今、動き出した。20歳を過ぎた娘の再挑戦と、父としての葛藤。

家族と日常

ある日の午後。
家事を手伝い、下の子たちの面倒もよく見てくれる優しい次女が、珍しく僕の部屋の扉を叩きました。

何気ない態度で話しかけてくる娘。
こうして一人の「女性」として正面から向き合って話をするのは、いったい何年ぶりだろうか。
他愛もない世間話が一段落したところで、僕はふと気になって聞きました。

「何かあったの?」

少しの沈黙のあと、彼女は意を決したように口を開きます。

「私、もう一度、芸能界を目指してみたい」

子どもが「夢を追いたい」と言ったとき、
親はどこまで本気で背中を押せるのだろう。

応援したい気持ちと、
現実を知っている大人としての不安。
その間で揺れたことがある親は、きっと少なくないと思う。


話は、彼女がまだ中学生だった頃に遡ります。
僕の提案で、ある大手芸能事務所に手紙を出したことがありました。
オーディション時期でもないのに、親の勝手な判断で送りつけた、たった数枚の書類。

書類選考の合格率は5%未満とも言われる世界。
正直、通るわけがないと思っていました。

ところが届いたのは、
「いきなり最終面接」という予想外の連絡。

あどけなかった娘の中に、
プロの目には確かな「光」が見えたのでしょう。
けれど当時の娘は、まだ幼く、
自分の意志も覚悟も追いついていませんでした。

結果は不合格。

親の思い込みで、
心の準備ができていない娘を振り回してしまった――

あの日以来、娘の夢の時計は、
僕の中で止まったままになっていました。

――そして、今。

「私、もう一度、芸能界を目指してみたい」

20歳を過ぎた娘が、
今度は誰に言われるでもなく、
自分の意志で、僕の部屋の扉を叩いた。

「声優や、ラジオの仕事ができたら……」

そんな少し控えめな言葉に、
僕はあえて厳しい言葉を返しました。

「そんな生半可な気持ちじゃダメだ。
もう大人なんだから、独り立ちする覚悟でやりなさい。
劇団でも養成所でもいい。
今月中に、自分で応募しなさい」

突き放すような言い方でしたが、
娘は逃げずに、真っ直ぐ僕の目を見てうなずきました。

正直に言えば、
僕は娘に「頑張れ」と言えました。
でも、その裏には葛藤もありました。

10代の夢なら、
失敗しても「いい経験だったね」で済ませられる。
けれど20代は違います。
時間も、責任も、現実の重さも、
すべてが上乗せされる。

だからこそ、
軽々しく背中を押すことはできませんでした。
応援するという言葉の裏側にある“厳しさ”と、
僕自身も向き合わなければならないと思ったのです。

止まっていた時計は、
娘の中で、そして僕の中でも、
ゆっくりと、しかし確かに動き始めています。

この先、順風満帆とは限らないでしょう。
それでも――
自分の意志で歩き出した娘の時間を、
今度は逃げずに、同じ目線で見守ろうと思います。

厳しいことを言ったけれど、本心は応援でいっぱいです。

今夜は、頑張る娘の大好物でも用意して、
小さく新しい一歩を祝おうと思います。

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もしあなたの家族が、
「もう一度、夢に挑戦したい」と言ったら――
あなたは、どんな言葉をかけるでしょうか。

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